昨日、本棚にあったロルカ(フェデリコ・ガルシア・ロルカ。スペインの詩人。1936年のスペイン内戦開始直後にファランヘ党員に銃殺される)の詩集を取り出し、いくつかの詩をながめていると、ふいに過去のある情景が鮮烈に蘇ってきた。
時は1975年、場所はスペイン・アンダルシア地方のグラナダである。春休みを利用してバックパックを肩に背負い貧乏旅行を続けながら辿り着いた街である。
スペイン語の語学生であった当時の私は、スペインの詩、とりわけロルカとアントニオ・マチャードの詩に傾倒しており、日本では手に入れることのできない彼らの詩集をここスペインで買おうと目論んでいた。
格好の書店を見つけ、店主に
私 「ロルカの詩集はありますか?」と尋ねると、
店主 「ロルカ?知らないね」との返答にあきれてしまう。
ロルカを知らないということは、さしずめ日本では宮沢賢治を知らないというに等しい。しかも当人は本屋のオヤジである。そこで、
私 「フェデリコ・ガルシア・ロルカですよ!ここグラナダ出身の偉大な詩人のロルカですよ!」
店主 「知らないね。さあ、かえった、かえった」
私 「・・・・・・・」
あっけにとられ、別の本屋にを探す。やっと探し当てた本屋で、
私 「ロルカの詩集はありますか」
店主 「こっちおいで」・・と店の奥に連れて行かれ、声を押し殺して、
店主 「ロルカの名前を口にしてはいけない。わかったね」
私 「なぜですか?」
店主 「いいから、黙って私の言うとおりにしなさい」
私 「・・・・・・・」
ロルカの詩集はフランコ政権時代には禁書扱いになっていたのは知っていたが、そのフランコは5年前に既に亡く、当時はフアン・カルロス1世の立憲君主制のもとに静かに民主主義が萌芽しつつあった。
それなのに、何故なのだろうか?
この謎は今もって解明できていない。
A las cinco de la tarde ・・・・・(午後5時に)