セコンドは「子羊の網焼き」だ。
普段は滅多に肉を食べないので、肉に関する薀蓄を垂れるのは憚られるが、この子羊は柔らかく、噛んでも噛んでも味がなかなか消えようとしない。従って、咀嚼し嚥下するまでに長い時間を要する。
簡単に言ってしまえば、もったいなくて飲み込めないのだ。
子羊との長い悦楽のときに夢中になりすぎて、この肉の素性を尋ねるのを忘れてしまった。
クライマックスを迎えるに当たり、今日の料理を頭の中で反芻しながら一人ほくそえむ。
舌で楽しんだあとで、頭でも愉しめる。こんなレストラン、滅多にない。