恵比寿には「香り家」、「玉笑」、「「なゝ樹」、「慈玄」などの蕎麦の旨い店があるが、このうちの「慈玄」だけは未訪である。前からずっと気にはなっていたのだが、やっとその思いを遂げる日がやってきた。
女房と恵比寿で待ち合わせ雨の中「慈玄」に向かう。・・・その道すがら、ここがスペイン料理の旨い「ティオ・ダンジョウ」だよ、などと話しながらその店を指差すと、その指の方向に新しい店を発見!しかも、私が愛して止まない「スペイン・バル」である。開店して間もないようだ。
場所は「ティオ・ダンジョウ」の1階である。(
「ティオ・ダンジョウ」訪問記事)
「ちょっとだけつまみながら、イッパイだけ飲もうか」と蕎麦屋でいっちょまえのディナーをすることなどそっちのけで店内へ突撃。なかなかいい雰囲気である。スペインのバルそのものだ。なんちゃってスペイン・バルがはびこる中、こういう店は嬉しい。味はどうかわからないけど。
まずは生ビール(私)とサングリア(女房)で乾杯。ビール一気飲みをし、女房のストップがかかる前に「サングレ・デ・トロ」の白をグラスで注文。ここはお酒が安い。
生はこのサイズで400円(300円だったかも・・)、白は400円。恵比寿なのにこの値段は嬉しい。
ワインを飲んでいると、以前に見た顔に気がつく。人懐っこそうな顔、ボコンと飛び出たお腹・・・果たしてその人は、「ティオ・ダンジョウ」のオーナーであった。なるほど・・・上でタベルナ、下でバルという両面作戦に打って出たというわけである。
経営が同じなら、つまみは不味いはずはないと、「トルティージャ」と「ナバッハ」(マテ貝)を注文。ここはつまみも驚くほど安い。どれもだいたい300円から600円なのだ。恵比寿なのに。
★「トルティージャ」
じゃがいものスライスの仕方(大きさ、厚さ)が好みである。玉子とじゃがいもの火の通り加減、塩加減はさっすがーである。前回食べたときよりも美味しく感じられた。
★「ナバッハ」
マテ貝なんて日本では食べられないと思っていた。今までに訪問したスペイン料理店でも扱いがないのだからスーパーにも、魚屋にもおそらく売っていないと思われる。それなのに・・嬉しい。
ナバッハを歯でちぎり噛んでみると、海の香りが口の中全体に広がる。これ、これ、これだよなぁ~。これ、貝好きの人にはぜったいオススメ!たったの500円で地中海にワープできまずぞ!ついでにトップレス海岸も見えたりして・・・。(妄想中 笑)
こんなに旨いもんを食べたら、蕎麦のことなんかどうでもよくなってしまい、さらにタパスを追加。
★「チャンピニョネス・ア・ラ・プランチャ」
マッシュルームの鉄板焼きである。私はマッシュルーム・アレルギーなので口にしなかったのだが、というジョウダンはさておいて・・・自らを「きのこ女」と称する女房がぜーんぶ、一気に食べてしまったのだ。女房にいわせると、「恵比寿18番」に匹敵する旨さだそうだ。(明治製菓「きのこの山」を5箱イッキ食いしたこともあるそうだ。ちなみに「たけのこの里」は口に合わないらしい。)
★「エスカベーチェ・デ・サルディネス」
鰯の南蛮漬けである。ただの南蛮漬けではない。野菜のエキスの味だろうか、うーんわからん。ひと味もふた味も違う、これも旨い。
も~ど~にもとまらない~♪リンダ状態なのである。で、またしても追加。
★「ハモン・イベリコ・ベジョータ」(5J)
スペインの生ハムである。でも、これはただの生ハムではない。生ハムの最高峰の「5J」(シンコ・ホタス)である。スペイン王室、イギリス王室御用達のハモンなのである。王室から破門されたら食べられなくなって、大暴れして世間に波紋を投げかけるハモンなのだ。(スマヌ)
赤身のところも美味しいが、脂身のところが特に旨い。豚の脂身ほど嫌いなものはない私にとって、こんなうまいもんはない!と言い切らせてしまうほどの実力の持ち主なのだ。
(「5J」はバルのメニューにはない。お願いして2階から持ってきてもらものだ。値段は不明。)
★「セピアス・フリートス」
「セピア」というのは小さい種類のイカで、スペインでもよく食べられている。これはそのイカの揚げ物である。
これはちょっといただけなかった。イカは新鮮で味は良いのだが、コロモがぜんぜんスペインしていないし、味は好みではない。このお店の実力だったら、スペインの味を再現することなんかわけもないことのように思われるのだが。
遊んでばかりいられない、仕事(=蕎麦行脚)をしなくては、ということで会計をお願いしようとしたら、ミュージックタイムが始まる。これは「トゥナ」という小楽団で、私が好きなアンダルシーア地方ではほとんど見かけないが、サラマンカあたりでは学生たちがバンドを組んで演奏しながら街を練り歩く光景をよく目にする。スペインや中南米のフォルクローレを、手ぶらで聴くなんてもったいないと赤をグラスで追加。これでワインは5杯目である。
赤ワインを飲みながらオレオレ!を連発し、すっかりオレオレ詐欺の虜に・・・じゃなくて、すっかりスペインにいるような錯覚に包まれた。
半分決まりかけていた次回のイタリア旅行がスペイン旅行に変更になってしまった。まったく罪な店である。
さて、肝心の仕事である。課題・その22は「慈玄」である。店に入ったのは8時すぎ。店内はガラガラの大盛況。・・・そうとうできあがっているのに、やっぱ、蕎麦には酒だよね、っちゅーことで和歌山の酒を注文。メニューには「無濾過」と書いてある。お店の人に意味を尋ねたが、「わかりません」・・・自分の店が取り扱っている商品の知識はちゃんと持ちましょうネ。
「もりそば」(800円)を女房と「わけっこ」して食べた。
蕎麦だけを食べてみると、歯ごたえはなかなかいいが蕎麦の香りと味が薄いように感じる。まあ、濃厚なスペイン料理を食べたあとなので、味覚が蕎麦のような繊細な味を感知できなくなってしまっているかもしれない。
つゆは甘くない。広尾の「暁庵」のつゆの味に似ているようだ。(あっちのほうが美味しいけど。)
蕎麦を終えて、つまみもチェック。<まだたべるんかぇ~?
「蕎麦味噌」はちょっとだけ甘く好みだ。「蕎麦とろろ豆腐」は木綿豆腐にとろろと蕎麦つゆをかけただけ。豆腐もとろろも陳腐な味だ。
今回はかなり酔っているので、私の感想はあまり当てにならないと思う。そのうち、蕎麦行脚・その758あたりで再訪してみたい。<それまでつづくんかぇ~?
「慈玄」から外を眺めていると、若い女性がひっきりなしにこの店に吸い込まれていく様が見える。
どんな店なんだろうと覗いてみるとオモニがやっている「韓国家庭料理」のお店。店内は若い女性ばっかりで、満席状態。
オモニに何日前に予約すればよいかをうかがったところ、「最低1週間前」とのこと。
こんな光景を見たらすぐにでもここで食事をしたくなる。若い女性に囲まれながら・・・美味しい韓国料理なんて、す・ば・ら・す・い♪
※家に帰りこのお店をネット検索してもヒットしない。ということは、まさにこここそ「隠れた名店」なのであろうか。それとも、私の検索の仕方が悪いのだろうか。・・・トシダシ
追記:あとで、「焼肉女王」の異名を持つ某嬢にこの写真を見せたところ、とても有名な店であることがわかった。彼女も未訪だそうだ。彼女が行く前に突撃してみたい。で、「いってきたでぇ~♪ごっつぅ うまかったでぇ~♪」といってザマミロ自慢したいものである。