私はすっぽんを食べたことがない。
すっぽんを食べることなくこの世に別れを告げるつもりでいた。
あんな見た目がグロテスクなものを食べる人の気持が忖度できないし、だいいち、あんなもんを食べたら絶対に正露丸のお世話にならなくてはならないと思ってきたからだ。
だから、テレビで旬を過ぎた芸能人がすっぽんを食べながら「うーん、とろとろして、これはたまらん」などと薄目をあけながら呟いている場面を観るにつけ、あれは絶対にヤラセだと思ってきた。
きっと「すっぽん普及協会」かなんかがテレビ局に袖の下をつかませているに違いない。(未確認情報)
ところが、今日は同業者の集まりがあって、強制的にすっぽんを食べさせられることになってしまった。
まずは「すっぽんの生き血」である。
相手は同業者である。ということは商売敵でもあるわけで、意気地のないところを少しでも見せるわけにはいかない。
だから、鼻もつままず、眼も閉じず、口もつぐまず(あたりまえか・・・)、慣れた風を装って一気に飲み干す。
あれ?血の味なんかぜんぜんしない、ワインの味しかしないじゃん・・・ホッとした。
上の右の写真はすっぽんの肝臓で、一匹から一個しかとれない。
じゃんけんで誰がイケニエになるかを決めたが運の悪いことに勝ってしまった。
料理店の女将の「これは飲まずにしっかりと噛んで味わってください」という言葉をそのまま信じて・・・・・ガジガジ・・・グェ、ギャァー、に、に、ニゲー!!!・・・バファリンの100倍も苦いのだ。
それでも、「ふーんだ、こんなのたいしたことないもんね」と涼しい顔を作り続ける。
これも仕事である、と自分自身に言い聞かせながら・・・・・
2時間近く経ってやっと本日のメインの鍋が到着する。
足のところから恐る恐る食べてみる・・・・・皮のところはぬるぬる・プルプルで気持が悪いし、体にも悪そうだ(ゼラチン質は私の天敵である)・・・肉の味は別に旨いとは思わない。食感はコーンビーフみたいである。
野菜やキノコでもつまんでごまかそうとしたら、女将がどうぞ!とすっぽんの頭を入れてくる。
さすがに頭を食べるときには真下を向いて目を閉じながら食べた。
感想は足と同じで「きもわる、うまくない」であった。
〆の雑炊の味は「アメリカのお母さん」であったが、魚屋からロハでもらった鱈のアラで作った雑炊のほうがはるかに旨く思われる。
同業者の面々は「ふぐ雑炊よりもずーっとうまい!」と感動していたが・・・・・
料金はこれで11000円。
高かったのか安かったのかはいまだにわからない。
追記:すっぽんを食べても「すっぽんぽん」になりたいという気持にはならなかった。
また「すってんてん」にもならなかった。