酔いどれおぢんが辿りついたところはココであった。
500円払うと駄菓子が食べ放題になる「駄菓子バー」である。
この日一緒に飲んだ友人は大学時代の友人であり、小学校から高校まで別の学校であった。
それなのに、この昭和30年代の空間にいると、彼のことをまるで幼馴染みであるかのような錯覚をしてしまうから不思議である。
満腹にもかかわらず食べ放題の駄菓子を食べまくる。
ストローの中に入ったゼリーをチューチューすっては、うまい~~!を連発し、「前田のクラッカー」をボリボリしては「あたりまえだのくらっかー」と藤田まことの真似をし、酢イカではすっぺー!すっぺー!とワルガキ面をしながら笑いこける。
薄暗い店内を見回してみると、同年代のグループがそれぞれ昔の自分を懐古しながら、且つ騒ぎ且つしんみりと酒を飲んでいる。
それぞれがそれぞれの歴史を刻みながら今日までともかくも無事に生きながらえ、たまたまこの瞬間に同じ空間を共有していることになにか因縁めいたものを感じてしまった。
もっとも、こんなことを感じてしまうのは酒精の力が大きく寄与していることは確かであるが・・・
そろそろ夜も更けてきた。
はやく帰らないとかあちゃんに叱られてしまうと、腰を上げかけたとき、
「おい、ちょっとくらいならもってってもかまわないよな、フフ」と友人は食べ放題の駄菓子をコソコソと自分のポケットに入れ始める。
ここは持ち帰りは禁止なのだが、私も彼に倣い店員の目を盗み見ながら、こっそりとズボンのポケットに駄菓子を忍ばせるのであった。
はるか遠いむかし、駄菓子屋のばあさんの目を盗んで万引きをしたときのように。
今日の戦利品は「ラムネ」と「コーラキャンディー」であった。