グラナダのパラドール(スペイン国営ホテル)はその昔、サン・フランシスコ派の修道院であった。それに手を加え、ホテルにしたものだが、歴史のある建物には必ずといっていいほど、真偽のほどはともかく、「おばけネタ」がつきまとう。
聞くところによれば、このパラドールの107号室には修道女の幽霊がでるという。それもかなり高確率で。その昔、なんらかの理由でこの部屋に隣接した道具部屋に、ある修道女が幽閉され、彼女はそこに閉じ込められたまま一生を終えたという。彼女の怨念が何百年を経た現在でも息づいているのだという。
オバケ嫌いの私は、日本を発つ前からこの部屋を恐れていた。もし万が一この部屋を割り当てられたら、野宿をも厭わない覚悟であった。
ついにあこがれのパラドール・デ・サン・フランシスコに到着したのは6時半をまわっており、あたりはすっぽりと夕闇におおわれ古都の風情を醸し出している。パスポートを出してチェックイン。部屋は106号室・・・106号室?
ヤ、ヤ、ヤバイ。107号室の隣だ。どうしよう・・・・・。
ポーターのおじさんに、
汎著巣:「ねえ、106って107の隣じゃないの?」
ポーター:「え?何でです?心配ありませんて」
心配ありませんだと!こっちはただ隣かって聞いただけなのに・・・。
疑惑はさらに募る。
廊下を歩きながら私の目は「107」を探し求める。が、発見に至らない。
106号室に案内され、疲れた体を休めるのももどかしく、「107」探索に向かう。
107号室は隣かと思っていたが、のちにそのいわくつきの部屋はずっと離れたパティオのそばにあることが判明。ほっと胸をなでおろす。部屋の入り口の横に不自然に”Privado”(Private)と書かれた入り口があり、こんな事情を知らない人が見ても“オヤ?何か変だな”と思ってしまうような造りである。(04年2月7日)
ようやく恐怖から開放されると、腹の虫が騒ぎ出す。人間とははなはだ「ゲンキン」な存在ではある。
これが問題の107号室。やはり変だ・・・・・