過日訪問した目黒区中町にある蕎麦店「杉本」はお蕎麦が私の好みだったので、今晩はつまみの味をチェックすべく徒歩で出かけた。
惰性ビールで喉を潤したあと、ご主人にお酒の相談を持ちかけると、今日はとっておきの吟醸酒があると言われ、値段は1合で1250円もするがそのとっておきを頂いた。
茨城県石岡市の「府中誉酒造」の「渡舟」の無濾過生原酒がそれだが、瓶は新聞紙で包まれ、その上からラベルが貼ってある。
味はとてもフレッシュで、舌の上でころがそうとするがころがるほどの形を成す前に、口中のあらゆる粘膜から吸収されてしまいそうな錯覚を覚えるほどお酒と口の中の皮膚粘膜とが一体になってしまう。こんな体験は生まれて初めてである。
鼻に抜ける後味がまた素晴らしく、どんな言葉をもってしても表現できないほどの恍惚感をもたらす味である。
こういうお酒はぐびぐびは飲めない。値段が高いということもあるが、飲み急ぐことが、お酒に対して失礼だと思われるからである。
★「豆腐のもろ味噌漬け」(豆銘)祐天寺の「卯月」で初めて食べてあまりの美味しさに感動した「豆銘」である。前からこのつまみは蕎麦屋の定番なのだろうか?日本酒にとてもよく合う肴である。ただ、ちょっと量が少なすぎた。
★「そば屋のトマトサラダ」出汁のきいた蕎麦つゆに甘いトマトが浮いている。トマトと蕎麦つゆという組み合わせは面白い。思いつきそうで思いつかない取り合わせである。味はどうかというと、ちょっと不思議な味、また食べてもいいが、別にそうでなくてもいいという味である。
★「蒸し雲丹と蕎麦豆腐」
蕎麦豆腐の上に蒸した雲丹がのって出てくると思いきや、このように別々に出てくる。一緒に食べてもいいが、できたら別々に食べて欲しいとのこと。
蕎麦豆腐は想像していたよりも柔らかく、なかなかの味だ。驚いたのは蒸し雲丹で、これは美味しい。ご主人にその旨を伝えると、この雲丹は愛宕山で寿司屋をやっているご主人のお父様のところから仕入れたものだそうで、モノはいいそうだ。・・・なるほど!と納得する。
★「焼き味噌」焼き味噌の上に蕎麦あられをのせて食べるのだが、こういう食べ方も珍しい。蕎麦味噌の味は普通の美味しさであるが、あられの香ばしさが嬉しい一品である。
★「牡蠣の塩焼き」この牡蠣もお父様のところから仕入れたものだそうで、これの旨さは先日確認済みである。
女房はひと足先に〆の「鴨せいろ」(1700円)を注文。
鴨肉がとても柔らかく、味もスグレモノだそうだ。鴨肉好きの彼女によると、いままで食べた蕎麦屋の鴨ではここの鴨がいちばん美味しいと言っていた。(鴨は蔵王産)
私の〆は「辛味大根せいろ」。蕎麦は先日も書いたように私の好みだが、大根が辛すぎて辛すぎて、、、とても嬉しい。辛味大根とここの蕎麦はとてもよく合う。
高いお酒を飲んでしまったために(1250円X2、950円X2)、1万円を超える出費となってしまったが、それでも十分過ぎる満足感を得ることができた。
美味しいお蕎麦と旨い魚介類が食べたくなったらまた来たいお蕎麦屋である。