もう蕎麦が止まらない。蕎麦屋酒もとまらない。
午後3時ごろからどこの蕎麦屋で飲もうかとソワソワのしっぱなしで仕事に集中できない。厄介な習慣が身についてしまったものである。
今日の訪問店はネットであまり評判の良くない大岡山にある「さか本」に決めた。6時ごろにサクッと会社を出て、今日も徒歩で向かった。
お店はかなりの大箱店であり、雰囲気もなかなか良い。お店の中央にひとり客のためのカウンター席があり、その左右に複数客用のテーブルが並び、御簾で仕切りがされており、それぞれのプライバシーが保てるように造られている。お店の奥にはバーカウンターがあり、ゆっくりと酒を楽しむにはもってこいの場所だ。
私は中央のカウンターに陣取り、ビールと冷酒とを注文。
この冷酒は島根の「王禄」という名前で「無濾過超辛純米生」とメニューには書いてある。まったりとしていて辛く、飲み心地がとても爽やかな酒だ。
つまみのひと品目は「焼き味噌」。白味噌がベースだが、甘みが勝ちすぎており、味噌以外になにも混ぜ込んでないので普通の味である。トッピングの蕎麦の実は香ばしくて美味しくはあったが。
ふた品目は「酒肴4点盛り」である。蕎麦味噌とガレット、蕎麦豆腐、出し巻き玉子、板わさである。どれもこれもなかなか美味しい。特に蕎麦味噌はピリ辛でいい味をしている。
〆は「せいろ」。このように細く縮れた麺は私の好みであり、これを魚介類の出汁のきいたスープですすると?・・・おっと、ラーメンの話になってしまうところであった。
蕎麦は細くなかなかコシがある。もり汁との相性はとくに良いとは思われなかったが、まあまあ満足のできるものである。
薬味は山葵がなくねぎのみ。理由は聞きそこなったが、なんらかの意図があるのであろう。
神田だか浅草だか忘れたが、江戸時代創業のある蕎麦屋の老舗でもこのように薬味がねぎだけのところがあるそうだ。江戸時代には山葵は貴重品だったそうで、庶民の食べる「二八 十六文」の蕎麦にこんな贅沢品を使うことはできなかったという。
蕎麦は蕎麦殻が随所に見受けられる「挽きぐるみ」である。たまに歯にこの殻が当たることがあるが、それはそれで歯ごたえに変化があって面白い。
会計(約4000円)を済ませ店を出たのは7時過ぎ。この時点でお店はほぼ満席となっていた。
家庭内紛争が起こったときに絶好の避難場所であるここには、またひとりでゆっくりと来てみたいものである。
「さか本」(大岡山):http://www13.ocn.ne.jp/~enishi/