昨日、司馬慮太郎の「箱根の坂」をよんでいたら、「羊羹」の読みについての言及があった。「ようかん」の「かん」は呉音・漢音ともに「こう」と読むそうで、「かん」と読むのは中国の明朝時代で、従って「羊羹」が日本にもたらされたのはこの時代、すなわち日本の室町時代であるという。
漢字は中国伝来のものであることは周知の事実だが、その読み方(音読み)も同時にもたらされたものである。それは主に漢音と呉音で構成されており、羊羹の「かん」やこの日記の「行脚」の「行」(あん)という読み方は例外である。(「あん」は唐音と呼ばれる)
呉音は主に仏教用語に用いられ、「極」は「極楽」のように「ごく」と読み、「正」は「正覚寺」のように「しょう」となる。
前置きが長くなってしまったが、この正覚寺のすぐ近くの蕎麦屋「匠」で蕎麦と酒とを楽しんだ。
この蕎麦屋は「へぎそば」という、越後地方の蕎麦を食べさせる名店で数年前には月に一度は訪れていたが、最近ではちょっと敷居が高くなってしまって足が遠のいていた。ここでつぶれてしまいお店の人に迷惑をかけてしまった、というのがその理由だが、やっと今日その敷居を跨ぐ日が来たというわけだ。
女房とビールと冷酒(久保田・百壽:550円)で乾杯をしたあと、「へぎそば」の手振サイズ(1260円)を注文。
ほどなく運ばれてきたへぎそばはふのりの緑色が鮮やかである。
何もつけずに食べた蕎麦はそのふのりの香りと蕎麦の香りが豊かで、歯ごたえは過去11回行脚した蕎麦屋の中でもいちばんしっかりしている。旨い!
次に、つゆにヒタヒタにつけて食べる。ここのつゆはあまり蕎麦にからみつかないからである。これも旨い。つゆは出汁が少し弱いが、その分、蕎麦の味が引き立つように思われる。
蕎麦でお腹がいい具合になったところで、つまみ開始。
★「のっぺ」(630円)
「のっぺ」は新潟の郷土料理で、へぎそばを食べさせる店では置いてあるところが多い。
(そのほかの居酒屋ではこの料理を見ないので勝手に新潟名物と決めつけているのだが・・・。)
人参、大根、里芋、こんにゃくなどの煮込みを冷やしてあるものだ。飲んだくれ用にちょっと塩分がきついが、この味はただの煮物ではない。家庭でなんども女房に作らせてみたのだが、この味が出せないのだ。
★「たこ揚げ」
この店は揚げ物が旨い。とくに天ぷらは最高だ。
たこは柔らかく、コロモはサクサクである。このコロモは普通の天ぷら粉ではなく、とうもろこし粉を使ってあるようだ。スペインで食べたカラマーレス・フリートス(イカ揚げ)を彷彿とさせる一品である。
★「合鴨ロース焼き」(998円)
鴨自体の味はいいのだが、ソースが狙いすぎといった味わいである。ソース作りに手間ひまかけたてあるのは十分にわかるのだが・・・。山葵醤油で食べたかった。
★「そば屋の焼き味噌」(840円)
味噌の味が好きだ。もう少し糖分を抑えてもらったほうが好みであるが、胡桃が入っていないほうが好みだが、これもなかなか美味しい。
会計は以上の食べ物に生1杯、冷酒4杯で7500円lくらいであった。
越後へぎそばと地酒の店「匠 本店」:http://r.gnavi.co.jp/g790000/
つまみを4品だけでやめたのにはわけがある。以前から気になっていたいか焼きの店で名物いか焼きを食べたかったからなのだ。店名はずばり「いか焼き道場 マハカラ」。目黒川沿いにひっそりと、目立たないように佇んでいる。なかなか謙虚なお店だ。
注文は芋焼酎のロックといか焼きのみ。メニューには「元祖神戸流」などとも書いてある。いか焼きのルーツは神戸なんだろうか?
いか焼きはふわふわでとろとろである。かかっているソースは神戸で製造されたものだそうで、地元では一番高級とされるソースだそうだ。(神戸のソースと聞いて、うっかり「オリバーでっか?」と尋ねたら、そんな普通のパンピーソースは使うわけあらへんでーと言われた。)
美味しいソースでふわふわのいか焼きを食べていると焼酎が止まらなくなり、2杯目を追加。
このいか焼き、直径が20センチくらいあって、値段がたったの350円という安さである。
あまりの美味しさに「阪神百貨店」のいか焼きとどっちが美味しいか尋ねてみたら、「うちらのほうにきまってるやん」との答えが返ってきた。
いか焼きだけでおしまいにする予定だったが、ここのスタッフのおもろいお兄さんたちとの会話がはずんで、そのうちの一人の口車に巧く乗せられてしまい、「神戸流 串カツ」も頼んでしまった。注文したのは「じゃがいも」(100円)、「アスパラガス」(150円)ほろほろ鳥のもも肉(250円)、牛肉(150円)である。
芦屋の奥様御用達というなんとかソースに一度だけつけて食べると、口の中がひあわふぇ一杯になる。ただの揚げ物なのに、知らない味と食感。もちろん、美味しい。
一軒目にここに来ればよかったとプチ後悔。通いたくなる店である。
「いか焼き道場 マハカラ」:http://www.mahakala.jp/nakameguro/index.html
今日は生を1杯、冷酒を4杯、焼酎を4杯も飲んでいる。千鳥足まではいかないが、七百鳥足くらいにはなっている。そんな足で自宅まで帰ろうというのであるが、中目銀座を歩いていたら、こんな看板が目に入ってくる。そうなると、「ちょっとだけね、いっぱいだけね」ということになる。女房は「もう十分飲んだじゃないのよ(怒)」ということになるのだが、お酒の勢いで強気になった私は「なに~ぃ!おれの酒がのめね~のかぁ~!」と怒鳴りつけることになる。(この部分は翌朝、女房から聞かされた。で、脅された。で、もうすぐ来る女房の誕生日に法外な値段のブツをプレゼントする約束をさせられた。これは女房の常套手段である。)
入った店は「ベネンシア」といって一年ぶりの訪問である。ここのご主人は銀座の「しぇりーくらぶ」の出身でイスパノフィロ(スペイン狂)であり、スペインのことだったら何でも知っているという人である。ちなみに「ベネンシア」というのはシェリーの樽からシェリー酒を酌み、それをシェリーグラスに注ぐ道具のことである。その器具を扱う人は「ベネンシアドール」と呼ばれ、そのプロがシェリー酒をグラスに注ぐ様はまさに芸術である。
ここに来たときにはまずはじめにコルドバ近くでできる「モンティージャ」(Montilla)を飲む。この酒はシェリー酒のフィノよりも辛口で、すっきりとした飲み口である。
女房は「アモンティジャード」。「アモンティジャード」は「フィノ」よりは甘く、「ドゥルセ」よりは辛いのだが、この甘辛加減がブランドによってまちまちである。この「アモンティジャード」はこの加減が女房の好みだったようで、この時点で悪かった機嫌が直ったように思われた。
モンティージャを2種類飲んだあと、さらに「マンサニージャ」を2種類飲んで、はいできあがり。
会計は3000円くらい・・・だったように記憶している。
「ベネンシア」:http://www.venencia.net/
このあと、中目銀座→記憶なし→祐天寺の墓でご先祖様に深酒のお詫びをしようとしたが門が閉じられていた→記憶なし→・・・・・→今朝、居間のソファで寝ていた→女房に脅迫された→会社に定時出勤→仕事が捗った・・・ということにしておく。