女房の熱は外で食事ができるほど下がっていない。
昨晩は食事の内容はともかくも気分的になんとなく侘しい食事だったので、どうにも今日は外で食事をしないことには気持がおさまらない。
夕方になり何人かの友人に誘いの電話をするが、やはりそれぞれ家族サービスに忙しいようで私につきあってくれる輩はいない。
こういうときのために誘えばホイホイついてきてくれる女性がいれば・・・などと妄想するもそんなに都合の良い女性がいるわけではなし・・・・・
家で再び侘飯をするか、それとも思い切って外で一人飯をするかさんざん迷った挙句、エイヤ!と外に飛び出る。
目指すは渋谷・井の頭線横の飲み屋街である。
(いつかの記事に私はいわゆる「一杯飲み屋」には行かないと書いた。だが、想像していただきたい。いい年をこいた中年オヤジが一人でフレンチしながら「とれ・びあ~ん」などとほざきながらうっとりしている姿を!)
日曜のこの界隈はセンター街とは対照的に人影もまばらである。
従って開店している飲み屋も少ない。
その中で私が選んだのは「鳥竹本店」である。
実はこの店は高校時代、アルバイトで資金がたまると友人たちと押しかけて特大で旨い焼鳥に舌鼓を打ったものである。
カウンター席は満席だったので、地下のテーブル席に案内される。
一人で酒を飲んでいる客はだれもいないので居心地の悪さを感じる。
まずは中生で一人乾杯。
この生は普通の居酒屋では大生のサイズである。
(尿酸値の天敵をこんなに飲んでも良いのであろうか?)
しばらくすると、目当てのジャンボ「ねぎま」が運ばれてくる。
1本300円以上するが、鶏肉の味もタレの味も昔と変わらずに旨い。
ビールをやっと飲み干し、レモンサワーで「鳥肝」、「つくね」、「ピーマンの肉詰め」を喰らう。
一人で食事をしていると、話すという作業がないので、酒もつまみもあっという間に胃の中に吸い込まれてしまう。
鶏の肝もつくねも旨かったが、やはり「ねぎま」にはかなわない。
外国をひとりで旅行したときにしか一人酒をしない私にとって、東京のど真ん中で一人で酒を飲むとそこはかとない孤独感に包まれる。
この孤独感はときには苦痛をもたらすが、反対にそれに快感を覚えることもある。
この苦痛と快感とのせめぎあいが一人酒の醍醐味でもあるようだ。
時刻は午後7時。
会計を済ませ、ほろ酔い状態で渋谷の喧騒の中に・・・・・・
もう一軒いくとするか。