杉山亭のオムライスの存在を知ったのは、今から30年以上も前のことであったと思う。
開高健がある本の中で絶賛していたのだ。
このオムライスを初めて食べたとき、私の「オムライス観」がコペルニクス的転回をした。
それまでの私は母の作ったオムライスしか食べたことがなく、それはほんの少しの玉ねぎの入ったケチャップライスをカリカリに焼いた玉子焼きで包んだ代物であった。
初めての杉山亭のオムライスは、ケチャップの中に鶏肉が入ったチキンライスをふわふわの玉子焼きで柔らかく包み、その上にはたっぷりと茶色いソースがかかっていて、これを口に運ぶたびに悦楽の境地に達してしまった。
久しぶりにこのオムライスを食べに西小山の杉山亭に出かけた。
玉子はちょっと焼きすぎでふわふわ感がなかったのが残念だったが、チキンライスはケチャップがふんだんに使われてべちゃべちゃで味が濃く、こくのある、これもまた味の濃いデミグラスソースと一緒に食べると若かりし頃にワープできる。
若いころはこれをおかずによくご飯を食べたものである。
「EDOYA」や「グリル満天星」のオムライスに比べればはるかに庶民的な味である。
だが、私にとっては忘れることのできない味だ。
おそらく来年の今頃、ふと「杉山亭」のオムライスが食べたくなってまたこの店に来るような気がする。
追記1:杉山亭にはもう一品忘れられない料理がある。
それは「ミックスピザ」であるが、そのうちに紹介したいと思う。
(「ピッツァ」ではなく「ピザ」の中ではここのピザが私のランキングNO1)
追記2:西小山にはもう一軒、オムライスの旨い店がある。
このオムライスは杉山亭のとは傾向の違うものであるが、庶民的かつ(語弊があるかもしれないが)「下品」である。
これもそのうちに記事にしたいと思う。